吉丸記念館とお得や券

 小さい時から成績優秀にして度々大分県から表彰を受け、刻苦勉励して東京帝国大学(現東京大)に進む。性格は磊落(らいらく:さっぱりしていて細かいことにこだわらない)にして、自らを犠牲にしても弱きを助けようとする義侠心に富む。

 吉丸一昌の功績を顕彰する碑が建てられている臼杵市民会館の敷地内に同市出身の作詞家吉丸一昌の功績を顕彰する碑がある。すばらしい人だが、何だか超人的でもう一つ親近感が湧かない。人間吉丸一昌の別の面を示すものはないのか。

 「日本の唱歌(上)明治篇」(金田一春彦、安西愛子編 講談社文庫)があった。

 吉丸が作詞した「浦のあけくれ」について紹介するページに解説があった。

吉丸一昌といえば「春は名のみの」で始まる「早春賦」が真っ先に浮かぶ 吉丸一昌(1873-1916) 国文学者、作詞家。東京音楽学校(現東京芸術大学)の教授として国語を教え、また生徒監をつとめて、こわい先生だったという。性磊落で辺幅(すぐ人目につく着衣)を飾らず、酒を好み「おもしろやおぼろおぼろと酔いぬればわが天地は春めきいけり」と自作の短歌を放吟した。

 宴会などで興に乗れば、シューラシューラと訳の分からない歌を歌いながら独特の踊りを披露したという。

 いろんな角度からその人物に光を当てることで、その人物像が膨らんでいく。吉丸先生が少し身近になった気がするが、どうだろう。

 22年前に開設された吉丸一昌記念館臼杵市の吉丸一昌記念館「早春賦の館」を訪ねた。生誕120年を記念して1994(平成6)年4月に開館した。

吉丸は作詞家としてだけでなく、義侠心に富む篤志家としても知られる。早春の館のリーフレットには東京帝大に進み、「その頃より吉丸は修養塾と称し、少年10名程と生活を共にして、勉学はもとより衣食住から就職に至るまで世話をしています」。

 さらに「それに東京ででっち奉公している田舎出の少年や中学に行けない者のために下谷中等夜学校を開設しています」とある。

 下谷中等夜学校を開設したのは、吉丸が帝大を出て東京府立第三中学校(現都立両国高校)の教師として働き始めてからだ。

 「望郷の歌吉丸一昌」(吉田稔著 臼杵市音楽連盟刊)によると、下谷中等夜学校では同僚の教師や共感した教師らとともに手弁当で教育し、月謝も取らなかったという。

 背景には吉丸自身の経験がある。大分中学(現大分上野丘高校)、五高(現熊本大学)、東京帝大と進む間、吉丸は貧乏との闘いだった。多くの人に励まされて、親切にされた。その恩義に報いるために、こうした行動をとった。こんなふうに吉田氏は書いている。

 ただ、吉丸が貧しい子どもたちの面倒を一から十までみたわけではない。修養塾の子どもたちももちろん働いた。牛乳配達や新聞配達に汗を流したと「望郷の歌吉丸一昌」にある。

 牛乳配達は大変だった。片道3里(12km)の道を往復しなければならない。夜11時に本郷真砂町を出て、大八車を引いて王子の方に牛乳を取りに行く。そして、牛乳を積んで翌朝5時までに本郷真砂町に戻る。

 それから牛乳を缶ごと大釜に入れて消毒する。それをお客の注文に合わせて、一升瓶(1.8リットル)やその半分の五合瓶などに詰めて、それから配達に回った。

 吉丸一昌が生きた時代の状況、人々の暮らしがどんなものだったのか。その中で吉丸がとった行動はどんな意味があったのか。「早春賦の館」にそうしたことがはっきり分かるような展示があればもっといいのではないかと思った。

 ところで、何のために早春賦の館に行ったのか。DSC_1071 2000円分のお食事クーポン券「お得やけん(券)」をもらうためだ(7月18日佐伯支局長日誌「臼杵のお得やけん(券)」)。動機はともかく、また一つ臼杵のことを勉強できた。

 

「吉丸記念館とお得や券」への2件のフィードバック

  1. 崎山言世と申します。せっかくなので、もっともっと吉丸先生を取り上げてください。吉丸先生こそ、故郷や朧月夜を作るのにもっとも貢献された方ですよ。唱歌史をめぐる極めて重大な誤謬に、支局長さんが気づかなければいけませんね。楽しみにしています。「望郷の歌」はもはや古い知見です、吉丸一昌研究はもうずっと先にありますよ。いずれかのページを参照してください。
    http://blogs.yahoo.co.jp/kotoyo_sakiyama/62995795.html
    http://rasensuisha.cocolog-nifty.com/kingetsureikou/2014/07/4-8e13.html

    1. コメントありがとうございました。大分県南については「初心者」であり、まだまだ知らないことばかりです。できるだけ、あちこち行って、いろいろと見聞きしようと思っています。また自分なりの発見があれば、報告したいと思います。

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