賑わいが消えた漁港は

 かつては漁船がひしめいた漁港も今や数隻に「最盛期は7カ統あったが、今は2カ統になった」。佐伯市米水津の漁港でこんな話を聞いた。かつて漁船がひしめいていた漁港には今、数えるほどの船しかない。スーパーなどの店頭でいつも魚を見ているから、漁業現場の危機に鈍感になっている。魚の旬を楽しめるのも生産者がいればこそ。現場の状況をもう少し勉強しなければと反省した。

 「カ統」とは「船団」と言い換えてもいい。巻き網でイワシやアジ、サバなどを捕る時はどうするか。灯船と網船、運搬船が1セットになる。このセットを「カ統」と呼ぶそうだ。

 網を入れるのは夜である。まずは集魚灯を積んだ灯船の出番となる。集魚灯を海中に入れ、灯りを付けたり消したり、上げたり下げたりする。船を横に動かしたりもする。灯りに集まった魚を誘導してみる。灯りとともに動く「灯付きが良い魚」が多いほど後の仕事がやりやすくなる。

 灯りとともに魚群をできるだけ海面近くまで上げ、その間に網船が魚群を網でぐるりと取り囲み、徐々に包囲網を縮めていく。ロープを引っ張ると網の下側が閉まる仕組みになっており、網に入った魚は逃げられない。まさに一網打尽となる。

 当然魚を集めたところで灯船は網の外に出る。そして、別の場所で再び集魚作業を始める。網に掛かった魚は運搬船に積み込まれる。この作業が夜通し行われるという。

 巻き網漁のポイントは集魚灯でどれだけ魚を集められるかにある。だから集魚灯を操る人の給料が一番高いのだそうだ。

 米水津の巻き網船団の最盛期は昭和60年代だという。20年から30年ほど前ということになる。

 魚価の低迷。燃料費やえさ代などの高騰、後継者不足。漁業が抱える課題ははっきりしている。しかし、漁業関係者が思うほどには漁業の危機が消費者に伝わっていないのではないか。

 デパートやスーパーなどに行けば、魚は普通に売っているし、途切れることもない。値段も決して安くはない。そこには流通の問題があって、漁業者の手元に残る金は少ないと言っても、実際の値段を見ている消費者にはなかなかピンと来にくい。

 今そこにある危機をどうやって消費者に伝えるか。漁業関係者は工夫をする必要があるし、分かりやすく実態を報道することも大事だと感じている。

 4月6日付佐伯支局長日誌のタイトルは「農業よりも漁業が危機?」だった。臼杵市が新たに漁業に従事しようとする人を対象に「漁業担い手育成交付金」を新設したという話を書いた。

 臼杵市の交付金の話を聞きながら、後継者不足は農業よりも漁業の方が深刻ではないかと思った。それが4月6日の日誌のタイトルになった。そして、今回あらためて調べてみると、大分県内の市町村で独自に漁業の新規就業者に給付金を出しているのは、臼杵市以外は姫島村しか見当たらなかった。

 見落としたかもしれないので、断定はしにくいが、新規就農者に比べて支援が手薄な感じがする。

 水産白書によると、国内では1人当たりの年間水産物の消費量は、2001(平成13)年度の40.2kgをピークに2014(平成26)年度は27.3kgまで減少した。サカナ離れが進む結果になっている。

 だが、世界に目を転じれば話は百八十度変わってくる。これも水産白書にある。健康志向の高まり、新興国を中心とした動物性たんぱく質摂取量の増加、水産物流通システムの整備などで、世界の水産物消費は一貫して拡大してきており、今後も拡大が予想されると。

 うまくやれば輸出をテコに日本の漁業、水産業は成長産業になり得る。だが、具体的にどうすればいいのか。そこを語り、実践する人々が出てくることが今一番待たれるところだ。

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