迷子のお年寄りを保護

 佐伯警察署で19日、感謝状の贈呈式があった。感謝状をもらったのは佐伯市内の中学1年の女生徒と母親。2人は行き先が分からなくなった80代の女性を保護し、交番に連れて行った。

 2人が高齢女性と交番を訪れた後、市内の高齢者施設から入所者が行方不明になったと110番通報があった。まもなく交番にいる女性がその不明者であると分かり、家族に引き渡された。

 「人命救助で感謝状」といった話はできる限り記事にしようと思っている。「大事に至らない」ことこそ大事である。高齢者を自宅や施設に閉じ込めておけない以上、何かの拍子に徘徊(はいかい)のような行動を起こし得る。その時、早期発見できるかどうか。今回のような親切、善意にもかかっていると思う。

 高齢者が一時的に行方不明になる。こんなケースはどれほど起きているのだろうか。

 大分県警が今年3月にまとめた資料によると、行方不明者届の受理件数は2015(平成27)年が812件(前年比59件増)。このうち認知症の疑いがあるケースは103件(同32件増)だった。昨年は認知症による行方不明とみられる届出が大幅に増えた。

 警察庁が今年6月まとめた2015年中の行方不明者の状況がある。行方不明者は全国で8万2035人。その原因・動機をみると疾病関係が1万8395人と全体の約2割を占める。このうち認知症または認知症が疑われるのは1万2208人で疾病関係全体の3分の2に上っている。

 では、これが一時的に行方不明になった高齢者の実数かというとそうではあるまい。

 不明者届を出す前に見つけ出してトラブルに至らなかったケースもあるだろう。佐伯署から感謝状を贈られた今回のケースもそうだ。中学生と母親が高齢女性の様子を危ぶみ、念のためにと交番に行った判断が的確で大事に至らずにすんだ。

 母親によると、中学校の前で迎えに行った娘と話している高齢女性がいた。あらためて話を聞き、名前を尋ねるときちんと答えた。だが、室内用スリッパを履いているなど不自然な点が見られた。そこで自分のクルマで交番に連れていった。

 認知症などによって行方不明となった高齢者をいち早く見つけるための仕組みづくりが行われている。佐伯市でも地域包括支援センターと警察署、消防本部による「SOSネットワーク事業」の連携調印式が今年6月にあった。

 事業の柱の一つが、家族などの希望によって、事前に行方不明になりそうな人を登録しておくこと。実際にその人が行方不明になった場合、捜索に加わってくれる協力機関に迅速に情報を提供することができる。

 佐伯市では同事業を7月から始めたが、現在まで事前登録者は4人にとどまるという。なかなか理解が広がっていない現状がある。

 大分県によると、県内では全18市町村のうち佐伯市を含む16市町で高齢者見守り・SOSネットワークの運用が行われている。ただ、その運用実績は自治体間でばらつき、温度差があるようだ。

 ただ、具体的な数字となると、大分県による取りまとめやデータの公表がないため、16市町に運用状況の聞き取りをするしかない。

 県内の先進地域はどんな取り組みをし、どんな実績を上げているのか。なかなか見えにくい。

 高齢者の徘徊(はいかい)、一時的行方不明は大分県では大きな問題ではないのかもしれない。県も県警もそうした情報の提供に消極的に見える。それで「大事に至らない」なら、それはそれでありがたいことだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です