大学誘致はできないか

学校の統合で利用されなくなった佐伯豊南高校旧校舎 「大学や専門学校が佐伯市にあれば、子どもたちも外に出て行かなくていいのですが」。高校3年生の子どもを持つという女性が言った。女性が何とかならないかと問いかけた相手は佐伯市長である。子どもが減って小中学校の統廃合が進む中、大学や専門学校の開設や誘致なんてとても無理な話。そう思ってメモを取る手を止めてしまった。だが、と後で思い直した。もし本気で誘致したら可能性はあるのだろうか。ゼロでないならやってみてもいいのでは、と。

 15日も佐伯市長のふれあいトークが開かれた。大学うんぬんの話が出たのは同市弥生(旧弥生町)の会場だった。

 弥生地域の中心部には国道10号が走り、番匠川沿いに水田地帯が広がる。交通の便の良さなどから住宅開発も進んで子どもたちも多い。住民も子育ての環境整備に積極的なようだ。

 進学で市外に出ると、やっぱり就職も市外でとなりがちで戻ってこない。女性は言う。

 佐伯市内の高校卒業者の半数は市外に出てしまうようだ。企業を誘致するなりして雇用を創出し、若い人が流出しないように市は対策を考えるべきだ。別の会場でのふれあいトークでも住民側からこんな要望が出ていた。

 大学などを誘致するための用地の一つは大分県立佐伯豊南高校跡地。高校再編で県立佐伯鶴岡高校と統合し、今年3月末で旧豊南高校校舎は使われなくなった。佐伯市は旧豊南高の用地を県から買って、利活用を考えているようだ。

 とりあえず場所は確保したとして、高校も統廃合されるような地方都市に大学や専門学校が来る可能性はあるだろうか。

 大分県で大学誘致に成功した例としては別府市に開学した立命館アジア太平洋大学(APU)がある。

 どうやって誘致できたのだろう。大分県がまとめた「大学誘致に伴う波及効果の検証-立命館アジア太平洋大学(APU)開学10周年を迎えて」と題した資料があった。

 この資料に簡単に誘致・開学の経緯が書いてある。それによると、大分県では1993(平成5)年度、大学誘致に向けて国内の有名私立大学に対して「大分県への進出意向調査(アンケート)」を行うなど、各大学の感触、関心度合いを探っていた。

 一方、立命館大学もアジア太平洋における学術・文化の創造拠点となる新しい大学の必要性を感じていたという。

 県のアンケートがきっかけとなり、立命館との間で誘致(進出)の可能性について検討された。設置場所も複数の候補地から別府市十文字原が最適と判断に至り、1995(平成7)年5月、立命館、別府市、大分県の三者による覚書が調印された。

 APUは公私協力方式(地方自治体が用地や補助金など財政的な協力をして私立大を開設する方式)で設置することが取り決められており、総事業費297億円に対して、大分県は150億円の補助を、別府市は42億円の補助と大学用地(市有地約42ha)の無償譲渡など、大規模な協力を行った-と資料にある。

 1997(平成9)年10月に着工、99(同11)年12月に文部大臣の認可を受け、2000(同12)年4月に開学した。

 別府市の人口推移APUのホームページを見ると、現在は学部の収容定員が5000人、大学院が230人とあった。APUの開学で地域にどんな効果をもたらしたのか。県の資料は経済や人口などについて分析した。そして、別府市の人口減少に歯止めをかけて、人口面でもAPUの存在は大きいと県は指摘している。

 まずは意向を探ることである。良い感触を得られれば実現可能性を追求する。そこで学校側に手厚い援助を求められそうだ。懐具合との相談になる。そして、それだけのものを払う価値があると判断すれば誘致に踏み切ることになる。

 前提となるのは、どんな学校が必要なのか、最適なのかについて市民の総意があることだ。

 そんな難しいことを考えずに、まずはアイデアを広く募ってみる手もあるかもしれない。情報通信技術(ICT)もどんどん進んでいるようだし、うまくやれば、従来の大学や専門学校の発想にとらわれない斬新なアイデアが得られるかもしれない。

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