ふるさと納税で鮪一本

豊後水道で育った養殖マグロが水揚げされた 「まぐろ一本お届けします」。ふるさと納税の返礼品の新しいパンフレットを作った、と津久見市役所から連絡があった。「まぐろ一本」はその表紙に書かれている。一番の目玉である。ところで「なんで今頃」と聞くと、津久見の特産品であるミカンと養殖マグロはこれからが旬だからとの返事だった。そして、マグロの養殖場を見学しませんかとのお誘いを受けた。

 午前7時半に津久見港に集合。津久見市役所のクルマで市中心部から少し離れた千怒﨑に向かう。千怒の港に着くと「兵殖」「ひろびろいけすぶり」と表に書かれた建物があった。

 兵殖は津久見の海でマグロとブリを養殖している。ここが養殖場に向かう待機場所である。既に兵殖の従業員が集まっており、しばらくすると体操が始まった。

 それぞれの持ち場に向かう兵殖の従業員それが終わると、それぞれの船で持ち場に散っていった。マグロを見学する我々の船が出港したのは午前8時10分ごろだった。同行した市役所の広報担当によると、前回見学した日は波が荒くて船酔いした人もあったとか。今日は比較的穏やかだから(大丈夫だろう)と心強い言葉があった。

 船は四浦半島沿いを進んださて、船は市中心部を後ろにして四浦半島沿いを走る。途中、波が少し高くなるところもあったが、問題はなく、出港から20分ほどで養殖場に到着した。今日の見学のメインはマグロの釣り上げである。

 まずは1人が生け簀の中にエサをまく。撒き餌である。そうしてマグロの食い気を起こしておいて、サオに付けたエサを水面下に浅く入れる。それに食いつくと針に電気が流れる仕組みになっていてマグロは気を失うことになる。

エサがついた針には電気が流れる仕掛けが 別の生け簀で作業を終えた後、午前9時15分頃、マグロの一本釣りをする生け簀に到着。早速準備が始まった。まもなくマグロの捕獲が始まった。釣り上げると横で待っている作業員が素早くとどめを刺し、血抜きをする。直後に腹を割いて内臓を取り出し、我々が乗ってきた船にマグロを上げる。

針にかかって引きあげられるマグロ 船倉にはシャーベット状の氷がたっぷりと入っており、マグロを受け取った作業員が、その中にゆっくりと落とし込み、マグロを急速に冷やす。もちろん、鮮度を保つためである。釣っては、さばき、冷やす。この流れ作業が1時間ほど続いた。

 次々に釣り上げられるマグロここでマグロを捕る作業は終了。聞けば今日は「36本」だったという。今、兵殖では水揚げしたマグロの中でも良いものを「豊後まぐろヨコヅーナ」として売り出しているそうだ。

 兵殖によると、ヨコヅーナは他産地のマグロより1年以上育成するという。ヨコヅーナが育つ豊後水道の津久見沖は潮流が速く、冬場の気温が13度まで下がり、成長速度が遅くなるのだそうだ。長く育成する分だけうま味もあると兵殖の資料にあった。ほかにもいろいろな養殖方法のこだわりがあるようだ。

 丸々としたマグロの出荷作業が行われたこのヨコヅーナを丸ごと一本贈るのが津久見市のふるさと納税の返礼品である。ただし、納税額(寄付額)が100万円以上の人に限定される。ちなみに一本丸ごととはどれくらいの量か。同市のパンフレットを見ると、約30kgのヨコヅーナの可食部分は約15kg。内訳は大トロ約1.2kg、中トロ約8.4kg、赤身約2.4kg、カマ約2kgなどだそうだ。

 100万円以上など無理という方には別にヨコヅーナを楽しむ方法がある。ヨコヅーナの贅沢セット(赤身約500g、中トロ約300g、大トロ約300g)である。納税額(寄付額)が10万円以上30万円未満なら1回、30万円以上50万円未満なら3回、50万円以上100万円未満なら5回、このセットが贈られる。

 気がつけば頭の上でカモメが舞っていたどんな人が納税(寄付)をしてヨコヅーナを堪能するのか。今のふるさと納税のあり方については個人的には大いに疑問を持っている(4月7日付佐伯支局長日誌「ふるさと納税〝競争〟曲」)。それでも津久見市は地元産品でもないものを返礼品にするところよりはいいということだろう。

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