さて、どこまで書くか

頭・手・足洗浄器と多機能車いす 左の写真に納まっているものが何かおわかりになるだろうか。左の二つは頭・手・足洗浄器で、右は多機能車いす。いずれも多くの人の協力を得て大分市の田中晃一さんが開発したものである。この二つの製品が大分県の県産新医療・福祉機器に登録された。そのニュースリリースを昨年末、大分県庁の記者クラブに送ったそうだ。その資料をいただき、話を聞こうと、田中さんが経営する大分市の理美容室を訪ねた。

 紺色の洗浄器は最も高い状態、白色の洗浄器は足を洗う時の最も低い状態にしてもらった。高さは87cmから48cmまで手動で昇降する。洗面台自体の高さが24cmあり、足を洗うために洗面台の底にかかとをつけると、足のかかとは床からの高さ24cmとなる。

 頭などをつける場所(洗い口)は3カ所あり、利用者や利用部位によりフィットしやすくなるように考えてある。

 細かい工夫はまだある。紺色と白色の洗浄器で移動用のキャスターとシャワーヘッドが異なる。紺色のキャスターは大きく、白色は小さい。紺色は白色に比べ移動しやすい。白色は主に室内で使うことを想定。白色のシャワーヘッドはストレートとシャワーの切り替えができ、紺色はできない。

 紺色が通常の洗髪や洗面を想定しているのに対し、白色はフットケアなどで患部の雑菌をきれいに洗い流すことに力点を置いている。

 医療・介護用機器として衛生的であることが求められる。機器に合わせて付属品も作った。足などの患部を洗う際には洗面台を覆う使い捨ての洗浄カバーを使う。患部が直接洗面台に触れることなく排水穴から排水パイプ、排水タンクへと使用済みの水が流れていく。その際、排水パイプも使い捨てにする。タオルも使い捨てで、それも新たに作った。

 一つ一つの開発には多くの人や企業が関わっている。例えばと田中さんが挙げたのが、クニナリ(佐伯市)やポンド(別府市)などの大分県内の企業。多機能車いすも県内の工場で生産されているのだそうだ。

 ところで県産新医療・福祉機器に登録されるとどんなメリットがあるのか。県内の医療機関や介護福祉施設、歯科診療所などが、機器を導入する際、県の支援が受けられる。

 例えばリースで入れれば導入1年目の費用の2分の1が補助される。初期導入費の補助もあって消耗品や備品も対象に含まれるようだ。県内企業が開発した新製品の普及を後押しする狙いがある。このほか、大分県外では厚生労働省の職場定着支援助成金の対象になるという。介護労働者の業務改善、負担軽減に資するというのが理由のようだ。

 理美容室を経営する田中さんがなぜ、医療・介護機器を開発するに至ったか。話せば長い物語がある。

 多機能車いすと移動式シャンプー台(頭・手・足洗浄器の前身)の開発には、経済産業省の異分野連携新事業(新連携)の認定を受けて取り組んだ。2006(平成18)年のことである。それから7年後、田中さんは佐賀大学の松尾清美准教授らと開発した多機能車いすと移動シャンプー台の本格的な販売に乗り出した。しかし、そこは終着点ではなかった。

 移動シャンプー台はさらに多機能な頭・手・足洗浄器に進化した。そもそも、なぜ車いすを開発しようとしたのか。2000(平成12)年に有限会社ビューティフルライフを設立し、移動理美容車で県内の病院などを回り始めたのがきっかけだった。

 入院などさまざまな理由で理美容室に来られない人向けに始めた移動理美容だったが、それを仕事としてやってみようと思ったのは、その前に長くボランティアとして散髪などに出向いていた経験が下敷きになっている。

 そんなわけで話を聞けば聞くほど、いろいろな材料が出てきて話がどんどん長くなる。さて、どこまで書くかと思うが、新聞の記事として書くなら、紙面の都合上、思い切ってコンパクトに、短くするしかない。

 ただ、この日誌では制約はない。改めて田中さんの話を報告する機会もあるだろう。もう少し整理して分かりやすくご紹介したいと思っている。

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