傾山の自然と合併の壁

佐伯市が作った図鑑「傾山の自然」 旧臼杵市と旧野津町が合併して新臼杵市が誕生したのは2005(平成17)年1月1日。1市5町3村が合併して九州一の面積を誇る新佐伯市が生まれたのは同年3月3日。あれから12年。旧市町村の壁といったものはどれくらい取り払われたのだろうか。よそ者からすれば首をかしげたくなるようなことも少なくはない。

 佐伯市地域振興課から1枚の資料が配布された。「『傾山の自然』の完成について」。

 傾山周辺の植物、哺乳動物、鳥類、昆虫類、水生動物を紹介する小中学生向けの図鑑「傾山の自然」を発行したとのお知らせだった。

 図鑑の副題に「ユネスコエコパーク登録を目指して」とある。ユネスコは「国連教育科学文化機関」。ユネスコエコパークは「生物圏保存地域」と訳される。「傾山の自然」の中にあるエコパークの解説佐伯市が豊後大野市や竹田市、宮崎県の延岡市、日之影町、高千穂町とともに大分、宮崎県境に広がる祖母・傾・大崩一帯のユネスコエコパーク登録を目指していることは、この日誌でも何回も紹介してきた。

 佐伯市がこの図鑑を発行したのも今夏のエコパーク登録に向けての啓蒙活動の一環である。

 図鑑の地図を見ると、傾山は佐伯市宇目(旧宇目町)と豊後大野市、宮崎県日之影町、祖母山は竹田市と豊後大野市、宮崎県高千穂町にそれぞれ接し、大崩山は延岡市にある。

 そこで佐伯市は傾山の図鑑をつくることにした。表紙絵もなかなか美しい。宇目緑豊小学校4年生が藤河内渓谷に自然観察に行った際に持ち帰った石で絵の具をつくった。さらに土を使ってクレヨンをつくった。そうした手作りの画材を使って描いた絵だという。

 図鑑の中に懐かしい話が書かれていた。捕獲されたツキノワグマの話である。1987(昭和62)年11月24日、大野郡緒方町(現豊後大野市緒方町)でツキノワグマが見つかった。ハンターに射殺されたツキノワグマとの説明とともに大の字になったツキノワグマの写真がある。

 九州では絶滅したはずのクマが見つかったということで当時大きな話題になった。このクマ発見に関連してルポ風の記事を書くことになった。ところが筆力不足で何回書き直してもデスクのOKが出ない。苦い記憶が蘇ってきた。

 話が横道にそれた。図鑑の話に戻ろう。地域振興課では「傾山の自然」を1000部つくった。これを市内のすべての小中学生に配布するのかというとそうではない。宇目地域の小中学生には配るが、その他地域の子どもたちに渡す予定は今のところないようだ。

 確かにエコパークの直接の対象となるのは宇目地域である。だからと言って宇目だけがエコパーク登録に向けて盛り上がればいいということでもあるまい。旧1市5町3村の一体感を高めていくためにもエコパーク登録に向けた動きを全市に広げていった方がいいのではと思う。

 市内全部の小中学生に配らなくても、4年生とか5年生に配布し、例えば市内の4年生が全員、図鑑を手に藤河内渓谷の自然観察をする。そんなプログラムを考えてもいいと思う。

 良い図鑑をつくったのに、地域割り、縦割り(地域振興課と市教委とか)で十分に活用されなかったとなれば、いかにももったいない。

 縦割りと言えば臼杵市観光情報協会と吉四六の里観光協会(臼杵市野津町)のホームページ(HP)もそうだと思う。

 臼杵市観光情報協会のHPに31日から始まる「臼杵城址桜まつり」のイベント案内がある。一方、吉四六の里観光協会のHPには4月2日の「第42回吉四六まつり」の催し案内がある。

 逆に臼杵市観光情報協会のHPでは吉四六まつりの催しの内容が分からないし、吉四六の里観光協会のHPでは臼杵城址桜まつりの行事日程は書いていない。当事者からすれば「だから?」という話かもしれない。しかし、よそ者としては理解しにくい。一つになってもっと効果的に情報発信した方が良かろうにと考える。

 話は飛ぶが、臼杵消防団と野津消防団は4月1日に統合するそうだ。さまざまな組織、住民の意識を一つにしていくのは容易ではない。時間がかかる。改めてそう思わせる。

 「平成の大合併」と呼ばれ、各地で国や都道府県の肝いりで市町村合併が積極的に進められたが、その結果どうなったか。現場にいる人間が検証する必要があると強く思う。

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