津久見の市庁舎検討委

市庁舎の前にはグラウンドがある 津久見市役所で10日、第2回の市庁舎建設市民委員会が開かれた。津久見市庁舎についてはこの日誌でも何回か取りあげた(2016年5月6日付佐伯支局長日誌「市庁舎の違いはどこに」など)。現在の本館は1958(昭和33)年完成で築59年になる。耐震性にも疑問符が付くほどだが、建て替えの検討すらできなかったのは財源のめどが立たなかったためだ。それが熊本地震で話が変わった。津久見市では今年中に新庁舎の候補地を決めようと考えているが、果たして狙い通り行くだろうか。

 同市は昨年6月、役所内に庁舎検討委員会をつくった。その後専門家による検討委員会と市民委員会を設けて本格検討に入った。

 10日の市民委では、同市は新庁舎建設の候補地の選定について説明した。まず、庁舎建設の可能性がある市内の土地を抜き出し、その中で敷地面積5000㎡以上の条件で10カ所を選び出した。

 そして、専門家による検討も受けて①安全性②利便性③周辺環境④法令適合性⑤まちづくり⑥経済性・実現性の六つの観点から、10カ所をそれぞれ評価してみた。結果、評価が高かった順に4カ所を候補地とすることにした。

 それが図書館横は太平洋セメントの社宅跡地「市民図書館横民有地」「市役所予定地(埋め立て地)」「駅前公共駐車場」「現市役所用地」である。候補をこの4カ所に絞ることについて市民委の了承を得たいというのが市の説明だった。というのも、これから各候補地について細かい検討を進めなければならないので、今後の作業量を考えて候補地を絞り込む必要があるとのことだった。と、ここまで書いてきたが、津久見の地理が分からない人にはちんぷんかんぷんだろう。

 残った4カ所はJR津久見駅を中心に半径500m内に位置する。他の6カ所はそこから外れている。「まちづくり」や「利便性」では都市の中心部にある方が評価は高くなる。そこで、委員からは質問が出た。「六つの項目の中で重点と考えるのはどれか」と。庁舎問題がクローズアップされたのは大地震と大津波が起きたからだ。

 東日本大震災に続いて、昨年は熊本地震が起きた。熊本地震では熊本県宇土市の庁舎が被災し、防災拠点としての役割を果たせなくなった。宇土市庁舎は1965(昭和40)年に落成した。これを見て津久見市の庁舎は大丈夫かと昨年5月6日付佐伯支局長日誌で書いた。

 宇土市と津久見市には共通点がある。「平成の大合併」といわれた市町村再編劇の中で、どちらも合併しなかった。だから、合併を選んだ市町村に与えられた合併特例債という「アメ」をもらえなかった。1市5町3村が広域合併した佐伯市は庁舎を建て替えた。

 だが、熊本地震で話が変わった。国としても放っておくわけにはいかなくなった。津波で浸水すると予想される地域にある公共施設をその地域外に移転する場合は国の手厚い支援が受けられる。港の埋め立て地が市役所予定地だった2020年度までの措置だという。この「緊急防災・減災事業」を利用できれば市の負担は大幅に軽減できる。ただ、新庁舎候補地となった港の埋め立て地(市役所予定地)も現市役所用地もJR津久見駅横の駅前公共駐車場も「浸水想定区域」にある。現在地での建て替え、埋め立て地、駅前公共駐車場への移転では「浸水想定区域外」への移転にはならない。

 ※緊急防災・減災事業債は、住民の避難、行政・社会機能の維持及び災害に強いまちづくりに資する地方単独事業を対象とする地方債。自治体の財政負担が30%、国の負担が70%と自治体負担が軽くてすむ。東日本大震災を教訓につくられ、熊本地震を受けて2020年度まで延長・拡充が決まった。全国知事会などは「緊防債」について時限的な措置ではなく、恒久化することなどを求めている。

 市によると、移転地を探したが、適地がなくてやむを得ず想定区域内で建て替えをせざるを得ない場合、例外的に認められることもあり得るという。では残る一つの太平洋セメントの社宅跡地の「市民図書館横民有地」が最有力になるかというと課題がある。ここは海抜5.5mで浸水想定区域外だが、敷地が5000㎡と最低限の広さで、しかも用地の買収を行わないといけない。

 話を聞いていると「帯に短したすきに長し」といった感じなのだ。さて「重点と考える項目は」との質問に対し、津久見駅横にある公共駐車場市長は6項目の何に重きを置くかも含めてこれからの検討という趣旨の回答をした。出席した委員の中には「まちづくり」の観点から駅と市庁舎、さらに商店街の一体的な整備を求める声もあった。個人的には市庁舎問題は南海トラフ巨大地震対応が基本だと思うが、そこは津久見市民の考え方である。

 いったんは先送りされた臼杵市庁舎の建て替え問題も7月に市民約50人による会義ができて、議論が再開される。市役所内部の会議、専門家による検討、市内の学識経験者を集めた市民委員会といった津久見市の手法はオーソドックスなものといえる。これに対し、広く市民を集めた会議でオープンに検討を進めようという臼杵市は少し変わっている。市庁舎問題の行方で両市の違いを報告する機会もまたあると思う。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です