もし自分が農業者なら

ライブ放映があった九州農政局大分支局 正直に言えば途中で眠くなった。5日午後、大分市で「農業競争力強化支援法に関する全国説明会」の生中継を見た。霞が関の農林水産省本館7階講堂であった説明会を九州農政局大分支局で視聴した。あらかじめFAXで参加を申し込んでおいた。「もしも自分が農業者だったら」と思って聞いてみようとしたのだが、もう一つピンと来なかった。「もうかる農業」という言葉にもいささか抵抗がある。四半期ごとの決算で一喜一憂する大企業のような近視眼的な発想で食料供給をとらえていいものか。

 田んぼや畑は毎日見ているが、現場を左右する農業政策についてはなかなか関心が向かない。これではいかんと少し勉強してみることにした。農業競争力強化支援法は今年2月に国会に提出され、5月に成立。8月1日の施行を目指している。

 まずはこの法律の概要が説明された。法律が制定された目的が第1条に書いてある。会場で配布された資料我が国農業が持続的に発展していくために、その構造改革を推進することと合わせて、良質かつ低廉な農業資材の供給及び農産物流通等の合理化を図ることが重要-などとある。会場で配布された資料の一つに法律の条文があったので読んでみた。これは参考資料として付けられたものだった。

 説明は資料1「農業競争力強化支援法について」、資料2「農業資材に関する施策の展開方法」、資料3「農産物流通・加工に関する施策の展開方法」の三つに基づいて進められた。資料で示された米の生産コストと流通コスト資料1では1ページの「法律の制定の背景」に続いて「(参考1)米の小売価格に占める生産コストと流通コストの割合」が紹介される。米とあり、15ha以上の大規模層のイメージとある。米の小売価格が10kgで3563円の時に農家の販売価格は2412円で68%を占める。

 逆に言えば残り1151円は農家には渡らない流通経費となる。例えば小売業者経費508円、中間流通業者経費399円などである。もちろん農家に行く2412円の中には生産資材コストも含まれる。それが689円、地代や利子など「その他コスト」が669円で、農家の手取りは1059円で全体の30%と試算されている。

 農業資材などの生産コストと流通コストがもっと下がれば農家の手取りが増える可能性が高い。しかし、農家が個々人でコスト削減を求めても簡単に応じてくれるわけもない。そこに国として切り込むのが今回の競争力強化支援法の目的との説明である。

 コスト削減で農家の取り分が増えると同時に農産物の価格も下がれば消費者にとってもありがたい。ただ、それだけでは収入が減る流通業者や資材業者にメリットがなさそうだ。「いやいや大丈夫」と農水省は言う。業界再編を後押しする支援策を講じると言う。

 肥料や配合飼料はメーカーが乱立し、工場が各地に点在しており、全体として非効率になっている。これを業界再編によって過当競争に歯止めをかけ、工場大型化などで生産効率を高める。そうすれば資材価格を下げても利益は確保されるというわけだ。

 流通改革も同様の発想である。シナリオだけ聞いていれば結構な話だと思える。ただ、コスト削減と農産物価格の引き下げが輸入農産物との競争に打ち勝つためのものだとしたら、現実はなかなか厳しいのではないかとも感じた。

 この法律の大きな目的は、農業者が自由に経営展開できる環境を整備することだという。資材の購入先や生産物の販売先なども農家が自分で選べるように情報技術(IT)を使った新たな試みを始める。例えば「農業資材比較購入サービス」はソフトバンク・テクノロジー社の取り組みである。生産者と卸売業者、スーパー、外食、食品メーカーなどをつなぐWebシステム「agreach(アグリーチ)」(農林水産業流通マッチングナビ)もあるそうだ。

 生産者は価格や利益にもっと敏感になって経営感覚を学べということだろうか。しかし、と素人として思う。例えば生産者が今年は米が儲かりそうだ、いや大豆の方がいい、米麦はやめて野菜で行く-などと目先の利益を追い求めていくようになることが食料の安定供給にはプラスなのだろうか。

 当然だが、需要を下回る供給しかなければ価格は高騰する。一番良いのは足りないと思うものを作ることだ。米が不足すると思えば米を作り、大豆が足りないと思えば大豆を作る。もちろん読みが外れて過剰生産になる可能性もある。それも市場によって生産が調整され、やがて安定するのかもしれない。だが、とも思う。「もうかる農業」の意識が浸透していけば、かえって国内需給は不安定になるのではと考えるのは素人の杞憂なのだろうか。

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