海事産業の人材確保策

造船所で溶接作業をする外国人技能実習生 海にかかわる取材が3日間続いた。一連の取材に共通するキーワードは「海」ともう一つは「人手不足」である。7日は臼杵市の臼杵造船所に、8日は津久見市の保戸島に、そして9日は佐伯市内のホテルにいた。そこで「佐伯海事地域人材確保連携協議会」の2017(平成29)年度総会が開かれた。海運業や造船業などの海事産業では労働者の高齢化が進んでおり、若い労働力の確保が課題になっている。そこで海のロマンと夢あふれる海事産業を関係者が一体となってPRしようと組織がつくられた。さて、その人材確保のための広報戦略はどこまで実を結んでいるのか。

 臼杵造船所に取材に行ったのは大分労働局、大分県警、福岡入国管理局大分出張所の「3省庁合同パトロール」が行われたから。政府は6月を「外国人労働者問題啓発月間」と定めており、その一環として外国人技能実習生がいる事業所への巡視が行われている。

 昨年は三浦造船所(佐伯市)が舞台となり(2016年6月21日付佐伯支局長日誌「地方も欠かせぬ外国人」)、技能実習生に話を聞く労働局職員ら今年は臼杵造船所が視察場所に選ばれた。三浦造船所と同様に臼杵造船所でもフィリピン人の技能実習生が働いていた。臼杵、佐伯両市の他の造船所でもフィリピン人が多いようだ。トラブルもなく一緒に働きやすい。そんな声を聞いた。

 技能実習生はオレンジ色のヘルメットをかぶっており、臼杵造船所のグループ全体で41人との説明だった。このうち、3年の実習期間を終える23人は近く帰国し、また新たな実習生がやって来る。

 外国人技能実習生の数は増え続けている。大分労働局が公表した資料を見ると、大分県内の外国人労働者のグラフ2016(平成28)年10月末現在で2326人で前年同期比454人増えた。外国人労働者は農業や林業、建設業、製造業・卸小売業などあらゆる業種に及び、受け入れる企業も中小から大手に広がっている。

漁業も同様である。8日に行った保戸島ではマグロ漁船が1隻出港した。乗組員は10人。そのうち6人がインドネシア人である。外国人に頼らなければ成り立たないのも現実だ。

 その中でマグロ漁船に12年ぶりに後継者が誕生した。保戸島出身の20歳の若者で、その初めての船出だということで8日に取材に行った。そのことは8日付の日誌に書いた。

 次は佐伯市であった協議会総会である。その資料に「九州海事産業次世代育成推進協議会事業」とあった。海事人材確保のための協議会総会16年度の事業で民間バスの借り上げ料が国土交通省九州運輸局から助成されていた。小・中学生などが造船所やフェリーなど海事産業の施設を見学に行く際に補助する。

 佐伯市内にある三浦造船所、佐伯重工業、本田重工業は進水式を公開しており、小学生などの見学が積極的に行われている。地元の基幹産業である造船業などを知ってもらい、将来その職を選んでほしい。そんな思いがある。ただ、本年度事業計画を見ると、次世代育成推進協議会事業は消えていた。なぜか。総会では説明がされなかった。

 インターネットで「海事産業次世代育成」と打ち込んで調べると、「第1回海事産業の次世代育成推進会議・幹事会」があった。資料を見ると、2007(平成19)年10月と日付がある。

 会議の構成メンバーは行政(国交省、海上保安庁)、海運(日本船主協会など)、船員(日本船長協会など)、造船・舶用(日本造船工業会など)、海洋レジャー(日本舟艇工業会など)とあり、船員教育、青少年育成、海事思想に関係する団体も名を連ねていた。

 翌年2月には国交省九州運輸局と九州の関係団体で「第1回九州海事産業次世代育成推進協議会」が開催された。中央から地方へ組織化の流れが広がる中で佐伯地域の人材確保連携協議会もつくられたようだ。

 国交省の資料を見ると、今後の海事広報の進め方として「青少年の海洋に関する興味を喚起し、感動とロマンを与えることを目的とした活動を強化し、青少年に海に関わる仕事へのあこがれ・夢を抱かせることを目指す」とあった。この10年間の活動でその目標はどれくらい現実のものとなったのだろうか。

 佐伯について言えば残念ながら広報は不足していると感じる。佐伯で海運業や造船業で働いている人は何人いるのか、事業所はどれくらいあり、産業としての規模は-そんな基本的なことがよく分からない。地元の海事産業の現状が市民に十分に伝わっていないのではないか。佐伯の、日本の、世界の造船産業の今と未来といった話が小学校や中学校で出前授業などとして行われているのだろうか。

 別にお金をかけてりっぱなパンフレットをつくる必要はない。機会があれば少し詳しい説明ができるような資料を用意し、関係者がさまざまな場にもっと積極的に出ていった方がいい。この日の総会でも出ていた。待っていても人は来ないと。そうだと思う。

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