高知のノーリフト宣言

こうしゅくゼロ推進協議会と書いてあった どこに行っても何を聞いても勉強になるものだ。24日は竹田市に行った。「『抱え上げない介護』研修セミナー」。同市総合社会福祉センターで開かれるという案内が随分前にあった。講師は一般社団法人こうしゅくゼロ推進協議会副理事長とある。聞いたことがない団体だが、テーマには興味がある。当日の講師の話でノーリフト協会や高知県のノーリフト宣言を知った。介護・医療職を腰痛から解放するための取り組みである。

 ノーリフト宣言とは「持ち上げない、抱え上げない、ひきずらないケア」を高知の介護の標準(スタンダード)にすることだという。高知県のノーリフト宣言2014(平成26)年度の高知県地域福祉部予算の説明資料があった。「本県のめざすべき姿=ノーリフト宣言」と書かれ、「これからの高知家では『腰痛になることを当たり前としない介護』を目指す」との解説があった。では、具体的に何をするのか。

 「リフトなどの福祉用具の導入」による腰痛対策の推進。しかし、機械を入れてもそれを使いこなさないと意味がない。そこで「機器の操作や腰痛を起こさない介護技術の研修による習得」も合わせて行う。そして、それを「事業所内での作業の標準マニュアルなどとして整備」する。

 ノーリフト宣言の背景には介護職員の離職率が高いことがある。理由の一つに職場環境があるという。腰痛発生率が他業種よりも高く、なかなか改善していない。そこで県が音頭をとって職場環境の改善運動に取り組むことになった。良い話だが、他の都道府県への広がりはどうなのだろう。ノーリフトと言えば高知県。始めて3年たって、まだそう言われているとすれば、あまり広がっていないのだろう。そうすると、普及を妨げる何か大きな課題がありそうだ。

 ところで、この日の講師が所属する介護を受ける側から介護のあり方を考える「こうしゅくゼロ推進協議会」とは何か。今年3月に設立され、福岡市を拠点に活動しているという。こちらは介護をしてもらう側から適切なケアとはを考える団体である。正確には分からないが、「こうしゅく(拘縮)」とは次のような状態のようだ。例えばベッドから車いす、また、その逆と、1日に何回も介護を受ける側が適切とはいえない方法で移動させられることによって、筋肉の緊張を招き、身体が硬くなってしまうこと-そんな風に理解した。

 介護者にとっては適切な福祉器具の導入が腰痛防止に有効であるのと同時に、介護を受ける側(要介護者)にとってもそれが現在の介護方法よりも心地よく、ストレスが少ないとしたら、それをやらない方がおかしい。では、なぜ、大分県はノーリフト宣言をしないのか、調べる価値はありそうだ。

 もう一つ勉強したことに「ノーリフト協会」があった。ホームページを見ると、活動報告があった。2009(平成21)年度から12(同24)年度までがある。その後の報告書がないのは最近はあまり活発に活動していないということだろうか。ホームページには「ノーリフト協会とは」という概要説明があった。それを引用すると。

 看護や介護に関わる人の腰痛を職業病として諦めるのではなく、 ケアのプロとして予防と対策を実施できるようになること。腰痛予防対策をツール(よい機会/チャンス)として 医療や介護現場に労働安全衛生マネジメントを定着させること。褥瘡(じょくそう)や拘縮(こうしゅく)の悪化、寝かせきりをなくし、プロとして、 ケアを業務にしないようにケアの質を再検討する機会をノーリフト(腰痛予防対策)を通して伝えることを目的とした組織を設立した-とあった。 

 厚生労働省も介護や看護の従事者などの腰痛問題を重く見ている。この日の講義では13(同25)年の腰痛予防対策指針が説明された。厚労省のホームページに「職場における腰痛予防の取組を!」とあった。19年ぶりに対策指針を改訂したそうだ。

 何回も書くが、こうした官民の最近の動きにもかかわらず看護・介護従事者の腰痛問題が解決に向かっているとは思えないのは、なぜだろうか。新たなことを知るとともに新たな疑問が生まれてきた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です