ノーリフト宣言その②

ベッドと車いすの移動はリフトで 24日付佐伯支局長日誌「高知のノーリフト宣言」の続きである。高知県は「持ち上げない、抱え上げない、引きずらないケア」を医療・介護の標準(スタンダード)にすることを目指している。「他の都道府県への広がりはどうなのだろう」と24日付日誌で書いた。そこで、高知県庁に電話してみた。担当の地域福祉政策課によると、ほかにノーリフト宣言をしたところがあるとは聞いていないという。高知県では施設職員の腰痛改善に効果が出ているというのに、なぜだろうか。

 この日誌を書いた24日にNHKのニュースにも取り上げられたようだ。NHKのホームページを見ると、「抱え上げない介護〝ノーリフト〟専用施設で研修会」とあった。

 中身を見ると、「『ノーリフト』と呼ばれる抱え上げない介護方法を学ぶための専用施設が高知市に完成し、24日、初めての研修会が開かれました。研修会には高知県内のほか東京や九州から、介護職員など30人以上が参加しました」とあった。

 ニュースはさらに「高知市には先月、ノーリフトの方法を学ぶ専用の施設が完成しています」「研修会を主催した『高知ノーリフト推進連絡会』の下元佳子事務局長は『重労働で腰を痛めやすいという介護の印象を変え、人材確保につなげたい』と話していました」などと続いていた。

 九州や東京からも参加者があったというから、関係者の間では関心を集めている施設なのだろう。しかし、都道府県単位で「ノー・リフティング・ケア」に取り組もうというのが高知県以外に出てこないのはなぜなのか。カネがかかるのか。導入を阻む制度の壁があるのか。あるいは他に理由があるかもしれない。

 高知県の担当課に聞くと、最終的には意識の問題ではないかという答えだった。持ち上げない、抱え上げない、引きずらないケアのためにリフトなどの機器を導入しても、それを使いこなせないと意味がない。みんなができるようにならないと効果が見えにくい。「組織的に取り組む」。それができるか否かだという。

 高知県は2014(平成26)年度に福祉機器の導入費用を支援する補助金を創設。県内18事業所が計84台を導入し、腰痛改善率は23.1%だったという。15(同27)年度は15事業所が計82台を導入し、腰痛改善率は29.0%だったという。高知県のデータを見る限り、職員の腰痛改善に効果が出ている。

 16(同28)年度には補助対象にスライディングシートやボード、グローブを追加。福祉機器活用に向けたソフト事業も拡充したという。ソフト事業としては総合的なマネジメント支援「ノーリフティング研修」や管理者向け研修、リーダー研修などを実施しているという。

 高知県に視察に来た自治体の一つに北九州市があったそうだ。同市のホームページを見ると、北九州市でのセミナーのポスター同市立介護実習・普及センター(通称「福祉用具プラザ北九州」)が「人が人を持ち上げない介護(ノーリフトポリシー)」の普及推進拠点となっているようだ。チラシが見つかった。14(同26)年8月2日にノーリフトセミナーが行われた。その案内だった。講師はNHKのニュースにも登場した下元佳子さん。生き生きサポートセンターうぇるば高知代表で、理学療法士などとある。

 北九州市では比較的早くから関心を持って取り組んでいたようだが、今はどうか。不思議なことに国家戦略特区の「介護ロボット等を活用した『先進的介護』の実証事業」の中で、介護における「ノーリフト」の考え方の啓発・普及活動が行われているようなのだ。同市ではノーリフトの考え方は新しいものでも何でもなく「先進的介護」の範ちゅうには入らないのではないか。

 そう思って担当の同市先進的介護システム推進室にも問い合わせてみたが、納得できる回答は得られなかった。確かなことは各地でノー・リフティング・ケア導入の試みが行われてきたが、現状では自治体単位で推進するに至っていないことである。なぜなのか。もう少し勉強を続けていきたい。

 

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