お墨付きを得るだけか

 児童生徒数の減少を示す佐伯市教委の資料「小学生がいなくなる日」というタイトルで佐伯支局長日誌を書いたのは2月19日のことだった。子どもたちが急減し、地域から次々に学校が消えている。佐伯市蒲江の小学校の閉校記念式典を見ながら、地域の危機を感じた。日誌にはそんな話を書いた。学校・教育関係者ならば常識と思える深刻な事態だが、世の中に意外と知られていないのだなと思わせる場面があった。30日に佐伯市役所で「佐伯市地域産業教育促進協議会」が開かれた。

 この日は協議会の発足総会だった。協議会の目的は若者の市外流出を食い止め、地元定着を促進すること。具体的には高校生の地元就職率を高める一方、大学進学などで市外に出て行った若者のUターンを促そうというものである。

 そのため、地元企業に関するさらなる情報発信を進めて、若者の関心と理解を深め、若者の地元定着を目指す佐伯市の協議会人手不足の地元企業にもっと就職してもらおうというわけだ。それで行政、商工会議所や工業会など企業関係者、教育関係者が集まって協議会を設けることにした。音頭を取るのは行政で、事務局は市商工振興課に置かれた。

 佐伯市地域振興部長の挨拶の後、協議会の規約が説明され、委員18人(欠席や代理出席あり)と事務局員5人の自己紹介があり、規約に従って市地域振興部長が議長になった。

 議題は本年度事業計画案とその予算案である。主な事業は①コーディネーターの配置②企業・職場体験学習事業③東京や海外での佐伯市の高校生のインターンシップ事業④大学生の受け入れ(インターンシップ)を実施する地元企業への補助-など。そのため市の補助金約462万円と大分県の補助金約197万円を充てる。

 事務局から縷々説明があった後、事業計画案と予算案は全会一致で承認された。そして、この後、委員による意見交換に移った。進行を見ていると、要するに市が進める事業に対するお墨付きを得るための会議のようなのだ。

 折角関係者が集まったのだから、実質的な議論を進めても良かった。議論をし、有効な対策を考えるには、まず出席者が現状の正しい認識を共有する必要がある。

 だから、高校生の地元就職率は何%なのか、これまでのキャリア教育などの成果は、佐伯市の児童・生徒数の推移の見通しは-などのデータは用意されていてしかるべきだろう。

 残念ながら、そうした資料も説明も事務局側からはなかった。委員からは現状を踏まえて、Uターンを促すための説明会も開かれているがそれをどう改善していくのか「指標」「数値目標」といったものが必要との意見が出た。これも至極当然の話である。本来ならば、関係者の議論を通じて「目標」を定め、事業の中身を精査し、目標達成のための適切な予算の配分を決めるのが望ましいことだが、現実は「事務局案ありき」だった。

 子どもたち一人一人が「生きる力」を身につけ、しっかりした勤労観・職業観を持てるようにするための「キャリア教育」が、文部科学省行政関連の審議会報告などに初めて登場したのは1999(平成11)年12月の中央教育審議会答申の中で、だそうだ。

 「『学校教育と職業教育との接続』の改善を図るために、小学校段階から発達段階に応じて『キャリア教育』を実施する必要がある」と提言されたのだという。

 佐伯市教育委員会でもキャリア教育推進協議会を設けてキャリア教育を実施してきたと市教委学校教育課から説明があった。ただ、キャリア教育の成果と課題がきちんと検証されてこなかった。そんな説明も付け加えられた。

 その反省から市教委では「学校を核とした『ふるさと創生』事業」を進めているのだという。細切れではなく、小中高校の12年間を見通したカリキュラムの策定がポイントになる。そして、伝統芸能や伝統技術の伝承、地場産業の研究など一校一実践の取り組みを進めているのだそうだ。

 面白い取り組みだが、「小学校、中学校で同じ活動の繰り返しになっている」「どのような力を付ければよいのかが明確になっていない」などの課題があるという。

 推進協議会の事業計画案は意見交換で出てきたような課題をどれくらい踏まえてつくられたのだろうか。

 ところで冒頭に書いた佐伯支局長日誌の「小学生が消える日」に戻ろう。「学校を核とした『ふるさと創生』事業」を説明する資料に児童・生徒数の推移があった。

 佐伯市の人口は2005(平成17)年の80297人から16(同28)年は74441人(いずれも5月1日時点)に減った。減少率は約7.3%である。同じ期間で小学校の児童数は4352人から3288人となった。減少率は24.4%に上った。中学校の生徒数は2306人から1785人となり、減少率は22.6%だった。

 佐伯市では総人口の現象を遥かに上回るペースで子どもたちがいなくなっているのである。こうした深刻な数字を委員全員が共有した上で議論しないと本当に有効な施策は出てこないのではないか。

 

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