誰に何を伝えるかで

和牛能力共進会の結果を伝える日本農業新聞 同じものを取材して記事を書くにしても、誰に何を伝えるかによっておのずと書き方も変わってくる。12日付の日本農業新聞と大分合同新聞の朝刊に「全国和牛能力共進会」の記事が載っていた。農業新聞は一面トップで合同新聞は一面のカタ。和牛能力共進会の記事が掲載された大分合同新聞農業専門紙が大きく報じるのは当然としても、合同新聞が一面で取り上げたのはなぜか。大分県の生産者が手塩にかけて育てた牛が日本一になったからで、見出しも県勢の健闘を称えたものだ。一方、農業新聞の見出しは「大分、宮崎が名誉賞」「団体表彰は鹿児島」とある。分かりにくいが、要は大分も宮崎も鹿児島も「日本一」の称号を得たということなのだ。

 ちなみに大分合同の見出しは「県産和牛 全国アピール」「共進会 種牛の部V、総合3位」「肉牛も前回上回る」の3本。農業新聞が専門紙なのに対し、合同新聞は大分県内で発行される県紙なのだから、農業新聞とは読者層も違い、ニュースの力点が違うのも当然である。

 ただ、記事に必要な要素はどちらもきちんと押さえている。合同新聞には「総合順位は各審査区(計9区)で獲得した点数を合計して決める。県は35点を獲得し、前回の24点から伸ばした」と書いた後に「1位は鹿児島県、2位は宮崎県だった。肉牛の部の最高賞は宮崎県代表だった」と続けている。

 ならば和牛日本一は鹿児島県ではないか。しかし、合同新聞は11日付夕刊の一面トップで「県勢が和牛日本一」と大きな見出しを付けた。どういうことか。ここらのことは農業新聞の記事の書き出し(リード)が分かりやすい。

 仙台市で開かれた第11回全国和牛能力共進会(宮城全共)が11日、閉幕した。最高位の名誉賞(内閣総理大臣賞)に「種牛の部」は第4区(系統雌牛群)優等賞1席の大分県・豊肥和牛育種組合が、「肉牛の部」は第8区(若雄後代検定牛群)同1席の宮崎県の出品牛が輝いた―。農業新聞の記事の書き出しにはこうある。

 「種牛」(「しゅぎゅう」と読むようだ)では大分が日本一に、「肉牛」では宮崎が日本一にそれぞれなった。

 では、ほかの部門はどうだったか。農業新聞に結果が出ていた。第1区(若雄)は鹿児島、第2区(若雄のⅠ)は宮城、第3区(若雄のⅡ)は鹿児島、第5区(繁殖雌牛群)は宮崎、第6区(高等登録群)は鹿児島、第7区(総合評価群)は宮崎、第9区(去勢肥育牛)は鹿児島だった。結果は鹿児島が四つの区でトップを獲得し、宮崎が三区で、大分、宮城が各一区で1位となった。

 農業新聞によると、全9区の上位入賞のポイントで競った「出品団体表彰」の首席は、九つの区のうち四つの区でトップの優等賞1席(農水大臣賞)を獲得した鹿児島県が受賞した―。大分、宮崎、鹿児島が各部門で日本一を分け合ったということになる。

 「鳥の目」「虫の目」を思い出した。農業新聞は全体を見ながら書いている感じが上から見る「鳥の目」に、大分県をニュースの中心に据えた合同新聞は対象に近い「虫の目」のように感じられて面白かった。

 それほど大分県にこだわってはいない人間とすれば農業新聞の方が分かりやすいとも感じた。

 ところで、このニュースを鹿児島の南日本新聞は、宮崎の宮崎日日新聞はどう伝えたか。

 それぞれのホームページを見ると、南日本は「鹿児島和牛、日本一 4部門で1位 宮城全共」の見出しがあった。記事は仙台市で開かれていた全共で鹿児島県が総合1位の団体賞を獲得したとまず書く。そして「団体賞は2007年の鳥取全共で設けられ、宮崎が2連覇していた。2位は宮崎、3位は大分だった」と続く。

 5年に1度の全共で宮崎の3連覇を阻んだところがさりげなく強調されている。

 一方、宮日新聞の見出しは「努力と準備、結実 和牛五輪で最高賞」。記事には「本県の8区代表が肉牛の部の最高賞・内閣総理大臣賞に輝いた」「8区のほか、5、7区で優等首席を獲得するなど『畜産王国』の底力を示した」などと書かれている。

 ちなみに両紙は社説にも取り上げた。南日本は「鹿児島牛日本一」と題して「ブランド定着の弾みに」と見出しを付け、宮日は「宮崎牛3連続日本一」として「チーム一丸となった勝利だ」と見出しをつけた。

 宮日はさらにコラム「くろしお」でも和牛の共進会を題材に取り上げており、力の入れようが違うなと感心させられた。

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