風倒木被害の研究報告

林野庁の発表資料 林野庁は26日、7月の九州北部豪雨で流木災害が発生したことを踏まえ、国土交通省と連携して山林などの緊急点検を実施すると発表した。国交省が全国の中小河川の点検を行うのに合わせ、流域で流木被害が発生する恐れがないかを緊急調査する。11月末をめどに点検結果を取りまとめるという。山々から大量の木々があふれ出た災害といえば26年前の風倒木被害を思い出す。ネットで検索していたら1冊の調査報告書を見つけた。

 「研究時報第18号」。1992(平成4)年8月に当時の大分県林業試験場(日田市)が発行している。研究時報に掲載された風倒木の現場写真「1991年9月、台風19号により発生した大分県における森林被害の要因解析」と題して2人が報告している。18号は全47ページを使って、この研究報告1本だけを掲載している。試験場としても力を入れて取り組んだことがうかがえる。実際、未曽有の被害だった。

 研究時報の要旨に次のようにある。1991年9月27日夕刻襲来した台風19号は、大分県北西部に位置する日田、玖珠、下毛(中津市)地方を中心とする森林に空前の被害をもたらした。森林被害面積2万2千ha余、被害金額は496億円に達し史上最悪の被害となっている。

 調査は被害のとりわけ大きかった日田市堂尾、天瀬町本城地区など日田市郡及び玖珠郡より5地区、森林面積にして約6千haを対象として、250mの方形格子網を設定し、この中心付近の森林618カ所について、林況、地況被害状況など被害の実態にかかるさまざまなデータを収集し、多変量解析(数量化・Ⅰ類)を用いて、風害減少の解明に取り組んだ-とある。

 よく分からないが、綿密な調査を行ったということのようだ。要旨の最後にあるのが結論だろう。次のように書いてある。

 「日田、玖珠、天瀬地区のスギ、ヒノキ林は、過密な林分が多く、形状比、収量比数が高く、林分的に風に対して弱い構造を持っており、これが今回の被害を大きくして原因になっていることがうかがわれた」とあり、「また」と続く。

 「林縁木の被害が少ないことは、従来より報告されていたが、これは今回の調査でも明らかであり、復旧造林に資するため、早急な科学的解明が待たれる」と結んであった。

 林縁木とはスギやヒノキの林の周囲を取り囲む木ということか。具体的に風に強かった木というのは広葉樹で、この調査報告でも具体的な数字を挙げていた。スギやヒノキの林を復旧するに際、広葉樹をどう活用すればより効果的か。早急に研究する必要があると報告書は述べているということだろうか。

 とすれば「針広混交林」などについて、この後研究が進んだということが予想される。どうなのだろう。災害に強い森林づくりはこの四半世紀でどのくらい進展したのだろう。

 研究報告は「おわりに」で書いている。

 「40年、50年と長い歳月にわたり、手塩にかけて大事に撫育されてきたスギ、ヒノキの林が一瞬の台風によって無情になぎ倒されていく、非情とさえいってよい、強大な自然のエネルギーの前には、人間の孜々(しし)たる営力のつみ重ねも無に等しいほどあっけない」

 「台風19号は、長い間の人間の労苦など一顧だにせずといった感で、足早に過ぎ去り、後に未曾有の森林被害を残したが、これは高い視点より捉えれば、現在の森林のあり方に対する一つの警鐘であり、あるべき森林の姿を問う点において大きな教訓を含んでいたような気がしてならない」

 正直に言って四半世紀も前のことなどはっきりと覚えているわけではない。ただ、この調査報告を引用して当方が言いたいことはいつも同じである。災害が起きてから多額のお金を使うぐらいなら、事前に同じぐらいの金を使って被害を軽減する手立てを講じていた方がいい-。常に思っている。

 被害の検証とその教訓を生かす。大きな災害が起きるたびに言われる言葉だが、本当にそれが行われてきたのか。河川の水位の急上昇を示す臼杵にのたたら川の流木そこを誰もきちんと検証をしてきてなかったのではないか。国交省と林野庁による今回の緊急点検の発表を見て、改めてそんなことを考えた。

 時事通信の記事によると、九州北部豪雨被害など近年の水害を受け、国交省は全国に約2万ある都道府県管理の中小河川の緊急点検を行う。徹底的な検証とそれに基づく必要不可欠な対策を講じてもらいたい。

 ところで、検証と対策の如何をチェックするのは誰の仕事なのだろう。マスコミだろうか。だとすれば、今の新聞やテレビはその役割を果たしているのだろうか。

 

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