厚労省の在宅医療会議

在宅医療に関する厚労省の資料 在宅医療に関する国の政策はどうなっているのだろうか。厚生労働省のホームページを覗いてみた。すると、昨年7月に「第1回全国在宅医療会議」が開かれていた。会議開催の目的は、在宅医療の提供者、学術関係者、行政の3者が三位一体となって、在宅医療の提供体制整備と国民への啓発普及を進めていくことだという。在宅医療に絞って議論をするのは厚労省で初めての試みだそうだ。会議は今年3月に第2回が開かれ、在宅医療推進の基本的な考え方と重点分野が公表された。まずは初回の会合の議事録を読んでみることにした。

 三位一体となった体制整備がなぜ必要なのか。厚労省の意図はそのまま「基本的な考え方」に盛り込まれている。

 大きくは三つあり、その一つが医療者側の行政に対する不信感の解消にある。国が在宅医療を進めるのは医療費の削減のためではないかなどといった医療者側の固定観念や不信感を払拭し切れていない-との厚労省の現状認識がある。

 体制整備ではもう一つ大きな課題がある。厚労省の説明によると、現在の在宅医療は各地域で先駆的な医師などが牽(けん)引してきたために、さまざまな考え方や手法が存在する。その多くが診療所を中心とした小規模な組織体制であるため、研究体制の確保が容易ではなく、全国組織としての連携も十分ではないという。結果、治療効果などに関する研究成果が体系的に蓄積、活用されていないとの指摘がある、と厚労省は言う。

 厚労省には地域や個人によって違う在宅医療の在り方を統合し、標準(スタンダード)を定める狙いがあるようだ。

 三つの理由の最後の一つは普及啓発に関わる。厚労省はこれまで「在宅医療が生活の質の向上に資する具体的な効果を(国民に)必ずしも示すことができなかった」と反省する。具体的な効果(エビデンス)を明らかにして国民の理解を促進するために関係者の協力を促進したいと説明した。 

 「大きな病院なら医師も多いし、安心できる気がする」。そんな発想が国民の中にある。そうではなくて在宅医療でもきちんとしたケアが受けられる。それを事実で証明し、利用を促す。国民の意識、先入観を変えようというわけだ。

 ところで、国としてなぜ在宅医療を推進する必要があるのか。「団塊(だんかい)世代が後期高齢者となる2025年に向けて、地域医療構想の実現と地域包括ケアシステムの構築が喫緊の課題であります」と厚労省の担当者は言う。

 戦後のベビーブームで生まれた人たちが8年後にはみんな75歳以上になる。65歳から74歳までの前期高齢者と比較すると後期高齢者の医療費は大きく増える。医療のニーズもそれだけ高まるわけだが、それに対し、現行の医療サービス供給態勢では間に合わない。そこで、そのギャップを埋めるものとして在宅医療の推進を図る。そういうことのようだ。

 厚労省の説明にある地域医療構想とはどんなもので、具体的にどんなことが盛り込まれているのか、まったく知らない。これも少し調べてみる必要がある。

 議事録を読んで分かったことの一つは在宅医療に関連して様々な団体、組織があることだ。日本医師会によると、6年前に「在宅医療連絡協議会」が設けられた。その後「日本在宅ケアアライアンス」(JHHCA)という団体もできた。「日本在宅医学会」「日本在宅医療学会」もある。

 「全国在宅療養支援診療所連絡会」と長い名前の組織もある。そのホームページを見ると、21日に開かれた大分県在宅医療推進フォーラムであいさつした大分市の山岡医師も世話人の1人として名を連ねている。

 これらの組織・団体の代表が厚労省の会議に参加している。ホスピス・在宅ケア研究会の総会案内その議事録に目を通しながら、面白いなと思ったのが日本ホスピス・在宅ケア研究会の代表の話だった。「長く在宅で、特に進行しているがんの方を見ていくと、看取りは基本的には医療というよりは、地域の文化にしていかなければいけないと思っています」と言う。

 「そして、看取りを国民の議論にしていくためにも、地域ボランティアを育成していくという方向性も考える必要があると思っており、実際に育成のための研修会を今、少しやり始めています」と続けた。

 人はどう生き、どう死んでいくのか。人生の黄昏時をどう過ごすのか。医療・介護だけの問題ではあるまい。在宅医療も日々の暮らしというもう少し広い「文脈」でとらえる必要がありそうだ。ただ、医療や介護の専門家が集まる厚労省での議論ではそんなぼんやりした話までできまい。そこにはおのずと限界がある。

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