23億円は高い安い?

大分市が購入を決めたJR大分駅前の土地(今年5月撮影) 大分市のJR大分駅前にある通称「パルコ跡地」(約4300㎡)の買い主が決まったようだ。大分市は10日に開かれた市議会全員協議会で、パルコ跡地を約23億円で購入する方針を明らかにした、と新聞報道などで見た。この日誌でもパルコ跡地問題を何回か取り上げた(最初は6月28日付佐伯支局長日誌「一等地を市が買うの?」だった)。10日の議会全員協議会では「価格が妥当か」などの指摘があったそうだが、そもそも「是が非でも市が取得しなければならない」土地なのかどうかがよく分からない。

  市のホームページにも詳しい情報はない。パルコ跡地の購入資金を計上した8月の市一般会計補正予算案には「大分市中心市街地祝祭広場整備事業」「30億円」と書いてあるだけである。しかも、大分市が試合会場の一つとなる2019年のラグビーワールドカップ閉幕後も祝祭広場として使い続けるかどうか、再検討されるらしい。確固たる将来方針もなさそうなのにポンと23億円も出す大分市は太っ腹だ。

 この日誌を読み返してみると、6月28日付「一等地を市が買うの?」に続き、7月23日付「大分都心の公園事情は」でこの問題を取り上げていた。

 大分都心になぜ新しい公園が必要なのか。大分駅南側にある芝生広場都心にそうした空間はないのか。実際に歩いてみようと考えた。JR大分駅の建て替えとともに周辺の整備が進み、一帯は変貌を遂げた。特に駅南側には芝生広場がある「大分いこいの道」が整備され、11、12日も食のイベントが開かれている。

 歩いてみた限りでは23億2千万円もかけて土地を購入し、新たな公園を整備する緊急性、必要性、妥当性は感じなかった。そもそも8月の補正予算に計上した30億円や土地購入費の約23億円は、大分市の予算ではどのくらいの規模といえるのだろうか。

 大分市の2017(平成29)年度一般会計予算を見ていると、教育総務費27億9365万円があった。これが金額的に近そうだ。ところで、教育総務費とは何だろう。学校の先生の給料や教育委員会の諸活動経費ということだろうか。中学校費が19億2352万円だった。市内の中学校の年間運営費よりも多い。これは決して小さな金額とは言えまい。

 にもかかわらず、市民に対して十分の情報公開がされているとは言い難いところに問題がある。8月の議会では競争入札だから、その前に手の内を明かすことはできないと詳しい話はしなかった。

 議会でのやり取りはこの日誌の8月8日付「大分市議会の議案質疑」で少し紹介した。その前に7月29日付「タネ地ならばともかく」を書いていた。この問題はどこか腑に落ちないところがある。そう感じて、当時関心を持って報道などを見ていた。

 さて、7月23日付日誌「大分都心の公園事情は」で、最後にパルコ跡地はいくらになるかと簡単な推測をしていた。ここで改めて紹介したい。

 パルコ跡地を購入するとして一体いくらかかるのか。地価公示最高値の中央町今春の地価公示をみると、大分市の商業地で一番高かったのは「中央町1-3-23」の1㎡49万1000円。大分駅から400m離れた4階建てのビルで、地積355㎡とある。パルコ跡地は駅の真ん前でしかも面積約4300㎡で更地である。49万1000円は超えるだろう。

 1㎡50万円とすれば約21億5000万円。確実に落札するためにはもう少し高い価格を考えておく方がいい。1㎡60万円なら約25億8000万円。入札者間の駆け引きがあるだろう。もっと高くなるかもしれない。

 結果は、不動産鑑定士の鑑定評価額24億円から、地中に残った構造物の撤去費を8千万円と見積もり、それを差し引いた額が購入価格になるという。

 市は不動産鑑定士の評価に基づいた金額だから適正と言う。議会の全員協議会では「大分中村病院が土地を取得した時は、価格が12億円だったはず。値上がりした理由を説明してほしい」などの質問が市議から出た、と11日付毎日新聞朝刊大分版にあった。

 ここまでの簡単な経過は8月8日付「大分市議会の議案質疑」で紹介した。「パルコが撤退し、跡地利用策が地元で模索される中で手を挙げたのが大分中村病院だった。新病院建設地として2012(平成24)年に土地約4300平方㍍などを約12億円で取得した。それが今年5月23日、新築移転の断念と用地の年内売却の方針を発表した」

 鑑定士が評価したといえ5年で2倍とはどうか。誰でもそう思うだろう。大分合同新聞の11日付朝刊の記事によると、市が用地を購入する場合は時価取得が原則だそうだ。JR大分駅の北口の風景つまり、JR大分駅周辺の地価がそれだけ上がったのだから仕方がないというわけだ。

 ならば、無理に買わないという選択肢も当然ある。土地を買う大きな動機となるのは地価の上昇である。この先も上がり続けると考えれば買った方が得である。

 しかし、このまま上がり続けないことも、むしろ下がることもある。1990年代のバブルの崩壊で経験した。しかも、日本は少子高齢化、人口減少の波に覆われている。大分県も例外ではないし、大分市も避けることはできにない。地域経済が縮小していく中で当然不動産に対する需要も弱まることが予想できる。

 パルコ跡地を購入後、その地価が下がっていけば今度は処分が難しくなる。損を覚悟で売却するのか、含み損を抱えたまま土地の所有を続けるのか。いずれにして将来の大分市の負担、重荷となる可能性があることも頭に入れておくべきだ。

 不思議なのは新聞やテレビがきちんとした解説や分析をしていないように見えることだ。朝日、毎日、読売3紙を比較して、大分市のパルコ跡地購入を一番大きく報じたのは読売新聞。経済面と大分版に記事を書き分けていた。毎日新聞は大分版で大きく取り上げ、朝日新聞は大分版に小さな記事があるだけだった。

 地元紙の大分合同新聞は詳しく書いてあるが、「当事者の言い分」が強く出て、客観的な分析が少ない感じがする。

 追記 大分駅前の一等地を誰が買って何が建つか分からないから、行政が買った方がいいというような声があるとしたら妙な話だ。売り手が買い手に対してきちんと条件を提示し、守らせればいいのであって、公序良俗や法令などに反するとなれば行政が指導、是正すればいい話である。むしろ、一等地だから民間の知恵を使って良いものをと考えた方が良いのではなかろうか。

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