金利なしで得する者は

週5日通う職業訓練校 「ゼロ金利の罠」-。岩波新書の「タックス・イーター」(志賀櫻著)を読みながら頭に浮かんだ言葉である。「貧困の罠」という言葉からの連想である。例えば病気などがきっかけとなって生活保護を受けることになると、そこから抜け出すのが極めて難しくなる。罠にはまった状態になる。

 それと同じように「金利なし」の状態が続くと、そこからはい出せなくなる-。今の日本経済はそんな罠にはまってしまったのではないかと考えたのだが、基本的なことを間違えていた。「ゼロ金利」は日銀の一時代前の政策で、今は「マイナス金利政策」なのだ。

 ゼロからマイナスへ。それは抜け出すべき罠、落とし穴がより深く、厳しくなったということか。

 ところで、マイナス金利政策とは何か。日銀のホームページに「教えて!にちぎん」というコーナーがある。そこに「5分で読めるマイナス金利」という解説があった。質問に対する答え(Q&A)方式でマイナス金利政策の狙いと概要が書かれていた。

 2016年3月とあるから、来年3月でこの政策が発動されて2年ということだろうか。「教えて!にちぎん」にあった解説その間に所期の目的はどこまで達成されたのだろうか。マイナス金利解除云々といった声を聞かないから、まだ道半ばなのだろう。

 「教えて!にちぎん」ではまず「日銀がマイナス金利にしたって本当?」との質問がある。すると、「日銀は、3年前から大規模な金融緩和をやってきました。『量的・質的禁輸緩和』と か『異次元緩和』と呼ばれています。これをもっと強力にするため、1月にマイナス金利もはじめました」と答えている。

 ということは2016(平成28)年1月に始まり、もう2年になるわけだ。次の質問は「マイナス金利になると、私が銀行に預金しているお金も減ってしまうの?」で、答えは「マイナス金利といっても、銀行が日銀に預けているお金の一部をマイナスにするだけ。個人の預金は別の話です」とある。

 ただ、普通預金金利も0.02%から0.001%と大きく下がった。100万円預けて1年間の利息が200円だったのが、10円になったのだが、それはデフレ(継続的に物価が下がり、経済が縮小していくこと)からの早急な脱却のために仕方がないことと日銀は言う。

 日銀が異次元緩和を実施してきた3年間で「会社はかなり儲かるようになって、春のベースアップ(給料アップ)も復活しました。デフレでなくなれば、給料も毎年上がるようになります」とも言い、質問者に先行きの希望を抱かせる。

 では、そのデフレ脱却はいつ頃なのか。日銀は答える。「みなさん忘れているかもしれませんが、3年前まで物価はマイナスでした。今は、ガソリンのように世界中で下がっているものを除くと、物価は1%以上上がっています。『もうデフレには戻らない』というところまで、あと少しです。この3年間、『異次元緩和』は、たしかに効きました。それをもっと強⼒にするということです。必ずデフレから抜け出せます

 答えは力強いが、デフレ脱却がいつ頃かは書いていない。異次元緩和もマイナス金利も緊急的、臨時的な措置だったかもしれないが、それが2年も3年も続くと、それが当たり前になる。「罠」とはそういうことだろう。今や金利のない世界が日本経済では「当り前」「常識」になって、そこから抜け出せなくなりつつあるのかもしれない。

 それで喜ぶのは誰だろう。政府の歳入歳出の不均衡(通称ワニの口)常識的には借金をしている人間だろう。では日本一の借金王は誰か。国である。政府長期債務残高は1000兆円を超えている。

 仮に政府日銀が目標とする経済成長率(名目3%、実質2%)と消費者物価の前年比2%以上の上昇が続くことになればどうなるか。当然金利は上がり、国の金利負担は一気に膨らむ。財務省はむしろ、そうした物価上昇は望んでいないかもしれない。とすれば既に「ゼロ金利」ではなく、「マイナス金利」の罠にはまっているということになる。


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