なぜ実態を見誤るのか

昨年末に借りた志賀櫻氏らの著作 ポリテクセンター大分で住宅模型づくりに没頭している間にも世の中ではさまざまなことが起きている。ニューヨーク市場に続いて東京市場でも再び株価が急落したようだ。バブル経済崩壊の序章なのか、あるいは一時的な変調に過ぎないのか。時間の経過とともに明らかとなってくるだろう。過去幾たびも政策当局者は実態を見誤り、結果として事態を悪化させてしまう判断ミスを繰り返してきた。なぜなのだろうか。

 政策当局が実態を正確に把握できない原因を探っていくと「金持ちの貪欲・強欲」に行きつく。米国で始まり世界に広がった「ウォール街を占拠せよ(We are the 99%)」の主張であった(ウィキペディアより)。99%の庶民と1%の富裕層。その1%が富を握り、不公正な格差を拡大させている。その数字はともかく、基本的な構図を考えると、これは誤った答えではあるまい。

 持ち金が乏しくてもマネーゲームに参加はできる。しかし、より多くの稼ぎを得るには手元に潤沢な資金があった方が断然有利である。マネーゲームでしこたま稼いだ人はどうするか。その一部でも税金にとられるのが惜しくなる。

 タックスヘイブン(租税回避地)の出番である。個人の富裕層だけでなく、国境を越えてビジネスを行う多国籍企業も「節税」を図る。各国の税務当局の監視の目をかいくぐった巨額資金の動きが世界経済に大きな影響をもたらす。そんな話を昨年12月に大分県立図書館で借りた本「タックス・イーター」(志賀櫻著)で読んだ気がする。

 そこで問題なのはそういった富裕層や多国籍企業は政治に対して強い影響力を持っていることだ。徴税を回避するために複雑な仕組みを考えだしたり、追及の手を緩めさせたり、多く稼いだ人ほど政治への圧力をはじめ様々な措置を講じようとするだろうことは想像に難くない。

 米国の不動産バブル崩壊を発端にした世界金融危機は2008年9月のリーマンショックで瀬戸際まで追い詰められた。

 米国証券大手のリーマンブラザーズの経営破綻が世界経済をここまで追い込むとは日米欧の金融政策当局者は考えていなかった。なぜだろう。自分たちが実施した金融緩和策が実際にどこにどんな影響を与えたのか、そこが正確には分からなかったというのが一番の原因といえる。

 金融緩和によってじゃぶじゃぶにあふれた金がどこに行ったのか。過去のバブル崩壊を見ると、巨額マネーは基本的には中長期的な投資ではなく、短期的な投機に向かった。かつての日本のバブル崩壊で言えば主に不動産と株だった。今はどうだろう。姿かたちはさまざまに変わっても「投機」という本質は変わっていないのではないか。

 そして、巨額の投機資金がどのように世界を駆け回り、今どうしようとしているのか、金融当局がつかみ切れていない。それが正確な情勢把握と判断を妨げている。そう考えると判断ミスを重ねることにも納得がいく。

 ともかくも米国経済は日本に比べればまだ健全である。FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げに長期金利が反応して上昇、金利の上昇に株式市場も反応して下落した。問題はその反応(株価下落)が多くの人の予想を超えたものだったが、経済のシステムが機能していることを示した。大事なことは、誰もが分かるような理屈で金融、経済が動いていることだ。日本ではこうした金融機能が麻痺して久しい。

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